- かげ
- I
かげ【影】(1)物が光をさえぎった時, 光源と反対の側にできる, その物の黒い形。
「夕日に~が長くのびる」
(2)光。 灯火。「星~」「渡る日の~に競ひて/万葉 4469」
(3)水面や鏡などにうつるそのものの姿。「~をうつす」
(4)姿。 そのものの形。「近ごろ彼は~も見せない」「うわさをすれば~」「見る~もない」
(5)細部は明瞭でないがそのものの輪郭としてとらえられる姿・形。「~になるまで見送る」
(6)心の中に浮かぶ姿。 おもかげ。「~を慕う」
(7)表立っては見えない人や物の存在を暗示するもの。 特に, 不安・不吉な兆候。「背後に大物の~が見える」「死の~におびえる」
(8)本体そのものではないこと。 身代わり。「~武者」
(9)〔心〕⇒ シャドー(2)(10)かすかな形だけで実体のないもの。「このかぐや姫, きと~になりぬ/竹取」
(11)やせ細った姿の形容。「~のやうにやせさらぼひつつ/宇治拾遺 6」
(12)本体に付き添って離れないもの。「よるべなみ身をこそとほくへだてつれ心は君が~となりにき/古今(恋三)」
(13)魂。「亡き御~どもも/源氏(宿木)」
(14)本物に似せて作ったもの。「真の小水竜は庫に納め~を作り持つたる故/浄瑠璃・雪女」
~が薄・い(1)元気がなく見える。 生気にとぼしい。(2)存在が目立たない。 印象が弱い。~が差・す(1)影ができる。(2)不吉な兆候が現れる。 また, 病気の兆候が現れる。「前途に不安な~・した」
(3)(日・月・灯火などの)光が当たる。「窓辺に月の~・す」
~の形(カタチ)に=随(シタガ)う(=添(ソ)う)が如(ゴト)し〔法句経(上)〕影が本体から決して離れることのないように, 常に一緒にいて離れない。 形に影の添う如し。 形影相伴う。~踏むばかりきわめて近いことのたとえ。「立ち寄らば~近けれど誰かなこその関をすゑけむ/後撰(恋二)」
~も形もない全く姿が見えない。 何の形跡もない。~を搏(ウ)つ〔「管子(兵法)」より。 人の陰影を打つ意〕手ごたえがないことのたとえ。~を畏(オソ)れ迹(アト)を悪(ニク)む〔「荘子(漁父)」より。 自分の影や足跡におびえ, それから逃れようとして走り続けた者が, 力尽きて死んだという故事から〕心配事を自ら思い設けて, いたずらに心を乱すことのたとえ。~を落と・す(1)光をなげかける。(2)自らの影を他の物の上に現す。 また, 自らの姿を水面などに映じる。「湖面に~・す岸辺の松」
(3)不幸・不吉・不安などをもたらす。「長びく戦争が国民生活に~・している」
~を隠・す姿を消す。 身をひそめる。「跡より追手のかかる者, 暫く~・さん為/浄瑠璃・一谷嫩軍記」
~を潜(ヒソ)・める姿を見せなくなる。 表立ったところから消える。IIかげ【蘿】ヒカゲノカズラの古名。III「得がたき~を置きや枯らさむ/万葉 3573」
かげ【陰・蔭・翳】(1)光がさえぎられて当たらない所。「ビルの~になって日当たりが悪い」
(2)物などにより視線がさえぎられ見えない所。「電柱の~に隠れる」「草葉の~」
(3)人の目のとどかない所。「~の人」「~で悪口をいう」
(4)表面にあらわれない所。 物事の裏面。「勝利の~にはたゆみない努力がある」「犯罪の~には女あり」
(5)はっきりとはしないが, どこか暗い感じがすること。「~のある表情」
(6)「陰祭(カゲマツ)り」の略。(7)恩恵を与えること。 また, その人。「たれを頼む~にて, ものし給はむとすらむ/源氏(若菜上)」
→ 御蔭~で糸を引・く〔人形遣いが陰で糸を引いて人形を操るように〕自分は表に出ずに他人を意のままに動かす。~に居て枝を折る〔木の陰があって助かっていながらその木の枝を折る, の意〕恩を仇(アダ)で返すたとえ。~になり日向(ヒナタ)になり人に知られないような面においても, また表立った面においても。 何かにつけて絶えず。 陰に陽に。IV「先生が~助けて下さった」
かげ【鹿毛】ウマの毛色の名。 全体にシカの毛色のように茶褐色で, たてがみと尾, 四肢の下部は黒色。 真鹿毛。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.